学生のころ、受験に関係ないからと五教科七科目を除く教科は遠ざけてきた。そんな私に還暦近くなって、「音楽」と向き合う日が来るとは夢にも思わなかった。ある調査によると音楽が好きな小・中学生は2〜3割ほどしかいないとのこと。(出展:「13歳からのアート思考」ダイヤモンド社)
私も音楽の授業は苦痛そのものだったから、学校卒業後は解放されたはずだった。しかし、58歳にして悪戦苦闘しているのはJazz Vocalのための楽典である。
今年の4月から参加し始めた近所のライブハウスのセッションではプロの演奏家とも協奏し、自分の歌を観客に聴いてもらい、拍手を頂く快感と引き換えに地道な手探りの取り組みはかかせない。
学生時代、音楽はわからないまま放置し続けてきた。だから現在、月2回ほど通うJazz Vocal教室で出される課題、自分のキーに合わせて元楽譜を書きなぞらえるだけでも一苦労。各種記号はもちろんのこと、拍もよくわかっていない。分数が苦手な私にとって「〇分の〇拍子」と言われた瞬間に脳も口もフリーズする。
セッションでは得意の演歌カラオケのようにリードメロディがないなか、歌うことに苦戦している。たとえば、セッションでは歌いだしのタイミングを逸するなんて日常茶飯事(笑)。
私がJazz Vocalに取り組み始めたきっかけは、今年3月。カメラマンとして、近所の小さなライブハウスで演奏シーンを撮影した際のとある出来事だ。お客としてセッションを聴いていた女性が、かわるがわる演奏していたJazzおじさんたちとの会話の中で、Jazz Vocal経験者と判明。彼女はおじさんたちにその場のノリで歌えるナンバーを決められ、無理やり舞台に押し出され、前奏が始まりそのまま歌い出した。
彼女が歌い始めるや、リズム感、ナチュラルなハスキーボイス、即興の協奏を心から楽しむ姿に観客は魅了された。演奏後、舞台の緊張から解放された彼女の「気持ちよかったー」との声には、心からの楽しさが溢れていた。その瞬間、私の悪い癖で、唐突に思いついてしまったのだ。「じゃあ、自分も歌ってみるか」と。
その後は、Jazzおじさんたちに勧められたJazz Vocal教室で現在も続く楽典との格闘の日々だ(笑)。
ここで唐突に弊社の事業に話を変えよう。
弊社ではSTEAM教育※を事業の一つとして取り組んでいる。還暦近いおっさんがJazzを歌うことはSTEAM教育と直接の関係はない。しかし骨子の一つである「仮説を掲げ、その検証をしながら、正解なきゴールへと近づける」ことは、私のJazz Vocalへの無謀な挑戦の過程もこじつけると、STEAMに近いのかもしれない。
※STEAM教育:Science,Technology,Engineering,Art,Mathematics 等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育(出展:文部科学省 R1.9.4教育課程部会資料)
音楽の授業をわからないまま放置した学生時代の自分に今こそ、言いたい。
「関係ない勉強なんてない。より豊かに生きるためには、高得点をとれなくても理解しようと粘れ。楽しく生きるためにはバランスよく学び続け、トライ&エラーし続けるしかないから」と。
私のト音記号の後悔は、学びを逃してしまった自分へのメッセージだ。その思いを胸に秘めつつ、音楽の楽しさを味わっている途中である。
(担当:Petit.lover兄)
▶ 事業紹介:STEAM教育