創作物で悪役を描くにも、特定の人物や出自の者をイメージするような風体であれば「差別だ」「偏見だ」と何かと難しいことになり、時には炎上するのを見て、なかなか難しい世の中だなぁ、と思う今日この頃ですが、一部界隈で「こんな見た目の人は絶対にいないから」と気軽に悪役として使われているのが「ピンク髪のヒロイン」です。
一部界隈というより、「小説家になろう」を始めとしたユーザーが創作物を発表するサイト群の女性向け創作界隈、と言うべきでしょうか。いわゆる「なろう系小説」の「悪役令嬢モノ」です。
そもそも「悪役令嬢モノ」とは。
乙女ゲームやロマンス小説のヒロインをいじめたり、恋愛を妨げ、最終的に破滅する運命にある「悪役令嬢」に生まれ変わった主人公が、断罪を回避するためにどうにかしよう、と試行錯誤して、ついでに恋愛をしたり現代知識で文明開化したり…と言うのがオーソドックスな「悪役令嬢モノ」です。
シンデレラで言えば、いじわる継姉になっちゃった!どうしよう!? から始まるストーリーだとふわっと認識していただければ大体合っていると思います。
ただ、それだけだと悪役が減ってしまうので、物語のスパイスが足りない。
ということで、「純情可憐なヒロインが実は邪悪な人間だった」というトッピングが追加されているのが今の「悪役令嬢モノ」の主流(?)だったりします。
しかし「純情可憐なヒロインが実は…」というのもだいぶ食傷気味になってきたのか、「悪役令嬢の中の人が相撲部員やバリキャリ営業マンだった」などの変わり種や、「知っている物語の世界に生まれたけれど名も無き一般市民だった」「悪役令嬢の母親になっていた」、一周回って「悪役令嬢になった自分自身が極悪人だ」など色々バリエーションが増えてきていますが、とりあえずそれは置いておくとして。
外見の描写として、「悪役令嬢」は「美人だがつり目、高慢できつい性格が見て取れる女性」であることが多く、逆に「ヒロイン」は「桜色の髪、若葉色の瞳をした可憐で元気な女性」とされていることが多く、そこから「ピンク髪のヒロイン=実は邪悪=いずれ〝ざまぁ〟される悪い奴」、というテンプレが出来上がって、物語を読み進めるにあたって人物理解をする必要がなくなる、タイムロスを防げるわけです。
さらにタイパに秀れている(?)作品だと、そもそも名前で「ワガマーマ」「エヴァ・リンボー」「チョイヤ・クヨン」みたいに「こいつはこういう奴だ!」とキャラクターの属性を主張していたりします。…本当にこれがタイパに秀れているのかはちょっと審議が必要かもしれませんが。
しかし、タイパと言えば、そもそもに。
英語での俗な言い回しに詳しい人には「一部界隈で悪役とされる〝ピンク髪のヒロイン〟とは外見は可憐だが性格はKARENなヒロインである」とひと言説明で終わる話だったりします。
さらに私自身のタイパを気にするのであれば「悪役令嬢モノにおけるピンク髪のヒロインについて説明してください。」とChatGPTに説明を生成してもらえば済む話。
…かと思ったのですが、案外情報がアップデートされていないようで「悪役令嬢モノでは、ピンク髪のヒロインは善良で心優しいキャラクターとして描かれることが多い」と答えが返ってきたので、AIに対して「まだまだだね」と謎のマウントを取るという、最高にタイパの悪いことをしていた私なのでした。
(まつ)
※イラストは、AIに描いてもらったもの