20年来の友人が窮地に追い込まれている。
今でこそ年に数回会うくらいの関係性だが、出会ったころはフルマラソンでしのぎを削った走友、ライバルであり同士。
何かあれば力になりたい。そんな彼が勤務する会社のストレスフルなプロジェクトを担い、出張に次ぐ出張、休みもろくにとれないほどの激務が重なったようだ。挙句の果て、ある疾患にかかり医師から入院を勧められているという。
彼がSNSで限定発信するメッセージから読み取れる情報に過ぎない。彼としては今の出来事と心情をSNSに吐露できれば十分らしいのだが。たくさんの温かい、おそらく長文のDMをもらうようで、半ば閉口している様子も見て取れる。
どうしても外せないプロジェクトの渦中だから、彼が担わないといけない案件を抱えているからと、今は入院などできないそうだ。そんな彼に追い打ちをかけるようにご家族の不幸が襲い掛かった。もはや「お身体お大事にね!」なんて言葉もかけられなくなった。
一旦は、会社なんかより自身や家族を大切にするためにも、無理せず医師に従うべき的な拙いメッセージの下書きを書き始めたが……
いやいや、そんな大人気ないおせっかいなんて迷惑なだけ。
合理的な判断は彼の知るところ。いや、まともな判断ができる状況ではないのかも。
そんな、いまの彼にもっともらしいアドバイスなど無用の長物だろう。
こんなとき、せめてものできることと言ったらSNSのリアクション機能と時折見せる何気ない発信へのレス不要な当たり障りないコメントくらい。見守るのが精いっぱい。
「イイネ!」ができるような発信は少ないから、「♡」「悲しいね」「大切だね!」
そんなリアクションの痕跡を残すことが長年の友人としてできるささやかなサポートかもしれない。かつての走友たちもみんなそうしている。
何もできないが、スマホを開くたびに彼の発信を探してはリアクションを考える。
来年は彼と笑顔で再会し、他愛もない会話ができることを願うばかりだ。
(petit lover兄)