『意見』を考える。
ジオグリフは学校や先生の要望に応じながらSTEAMプログラムを企画し、授業案を作成、実際に授業を行っている。
『STEAMプログラム』と言うと、一般的にはサイエンスだとか、テクノロジーだとか、エンジニアリングだとか言い出して、何だかとても難しげだが、私はもっと単純に考えてよいと思っている。
もっと「学び」の本質的な、「人が生きていくための智慧」を身に着けていくためのプログラムってなんだろう? というところにSTEAM教育の原点があるようにとらえている。

『学び』と言うのは、どうしても基本から専門分野へと広がっていき、専門になればなるほど分化していく。
たとえば現在の小学校で言えば、はじめは「生活」だったものが、小学校3年から「社会」と「理科」に分かれる。社会はいずれ「地理」「歴史」「公民」に分かれていき、さらに「歴史」が「日本史」や「世界史」に分かれ、さらにそこから専門領域へと広がっていく。広がっていくと見えながら実際に学ぶことは「深まって」いくのであって、領域としては「狭まって」いく。
理科も、生物、地学、化学、物理から、さらにそれぞれの専門領域へと「深まりながらも狭く」なっていく。
STEAM教育は、その逆だと考えれば良いと私は考えているし、実際にそのようにプログラム化する。
つまりより細分化された領域から、より本質的な、根源的な学びに立ち戻りながらプログラムを考える。
相変わらず前置きが長く、そして大げさになってしまったが…(ここまでが前置きなのだ)、今日はある小学校3年生で求められた課題に対して考えたプログラムのことを記事にしよう。
小学校3年生の担任の先生から求められたお題は「自分たちの考えたことを、相手に分かりやすく伝えるための方法を学びたい」ということだった。

全体プログラムとしては、「社会」の時間の授業をベースに、「社会見学」を通して学んだこと、気が付いたことを、プレゼンしていく流れ。
その中で「自分たちが学んだことを、どのようにすれば聞く人に分かりやすく伝えられるのか?」ということを事前学習したいというのが今回のお題だった。
最終的な目標地点は、「相手に伝わりやすいプレゼンができるようになること」と言う『アウトカム』がゴールだ。
ゴールはアウトカムなのだが、その前にプレゼンのスライド、プレゼン内容と言った原稿なりストーリーと言ったアウトプットが存在する。
ただし当社に求められているのは、プレゼンのためのストーリーだったり、スライドだったりするわけではない。そこは社会や総合の時間を通して授業の中で行う。
ならばジオグリフに求められていることは…というと、プレゼンのストーリーだったり、スライドだったりを、「相手に伝わりやすいように、まとめていけるようになること」というアウトカムが今回のSTEAMプログラムのゴール地点になる。
今回は、授業の中で「フィッシュボーン・チャート」を利用しながら、自分の経験から感じたこと、気づいたこと、家族や友達との会話をメモし、自分なりの意見をまとめていくというワークをプログラムの中心に据えた。
ただし、気を付けなければならないのは「フィッシュボーン・チャートの使い方を知ること」がゴールになってはいけないということだ。
そこで本稿のタイトル――「意見」を考える――が出てくる。
そもそも「意見」とはなんなのだろう。
たとえば…「意見」を英訳すると「Opinion」と言う単語が出てくる。
Opinionは、『事実や知識に基づいているとは限らない、何かについて形成された見解や判断』と、英英辞典では解説されている。
「事実や知識に基づいているとは限らない…」というところが面白い。
今度は『意見』を漢字で見てみよう。
意見の『意』は、音+心で成り立っている。ここで言う音は「ことば」のことだ。つまり『意』とは、心に浮かんでくる「ことば」のことを言う。
意見の『見』は、もちろん人間の目に映っているものを指す。つまり実際に自分の目の前で起こっていたり、自分自身が体験したりして、「それを目にしていること」を指す。
漢字で考えれば『意見』というのは、『自分の経験を通して心に浮かんでくることば』のことなのだ。
その経験が、さまざまな人が共通して経験することで、その心に浮かんだ言葉がイメージしやすければ、意見は「共感」を得やすい。一方で、特殊な経験を通して感じたことであったり、独特な「感じ方」であったりすれば、共感より驚きをもって受け止められる。
こんな感じで、ジオグリフのSTEAMプログラムは、目の前の出来事から、より基本的なことに、根源的なことに立ち戻りながらプログラムを考えていく。
「意見」というものを深堀する過程は、小学校3年生の子どもたちも、楽しそうに深く考えていく。
こういうプログラムは、「子どもには難しすぎる」ということもないし、大人から見ても「面白い」と思えるものなのだということを私は経験的に知っている。
そしてなにより、こういうことを考えながらコンテンツをつくっていくことそのものが、私はとても楽しいのだ。
(担当:TOY_BOX)
